福澤諭吉記念経済学特別講義
講義の趣旨
経済研究所が開催するレクチャに福澤諭吉の名前を冠する理由は、福澤が経済になみなみならぬ関心を示したことによると共に、領域横断的な福澤における知のあり方や、西欧の制度、思想のあり方に驚きを覚えた彼の体験に、我々は深く共感を抱くからである。
福澤諭吉が、明治期啓蒙思想家として群をぬいた存在であることは言を俟たない。この時期の思想家の常として、その関心は広く、今日の学問分野に対応させて考えるのであれば、社会科学については、政治、経済、法律、倫理の各分野、自然科学分野については、医学、物理学などに及んでいる。時代的要請もあり、福澤自身はこのなかのなんらかの分野に特化することはあえて避け、大道を示すという課題に自らを限定した。
と同時に、福澤の体系のなかで、経済という領域はけっして小さなものではない。これは、福澤の主要著作、『学問のすゝめ』、『文明論之概略』などを見ても明らかである。前者では、蒸気機関の発明者のワットや、蒸気機関車の設計者であるスティーブンソンとならんで、アダム・スミスが紹介されている。とりわけ後者では、社会の進歩に役立つ知性、すなわち「公智」の代表例として、唯一、アダム・スミスが「経済の法」を説いたことを挙げている。また、福澤著作集第六巻所収の『民間経済録』、『通貨論』、『尚商立国論』などは、第一級の論説である。
今日の学問が、精緻な展開を遂げたことはたしかであるが、同時にさまざまな課題が領域を超えて、回答を迫っていることもまた事実である。このレクチャにおいては、専門領域で顕著な業績をあげた研究者のみならず、既存の知の体系を乗り越えていくような研究者の講義も合わせて想定している。人は、そこに福澤スピリットの継承を見るであろう。
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