日本の企業・労働者接合データを用いたオフショアリングのスキルプレミアムへの影響の推計
The Effect of Offshoring on Skill Premiums: Evidence from Japanese Matched Worker-Firm Data
著者: 遠藤正寛
発行日: 2016年3月8日
No: DP2016-005
JELコード: F16, J23, J31
言語: 英語
【要旨/ハイライト】
日本企業の海外取引がその企業の労働需要にどのような影響を与えるか、「企業・労働者接合データ」を構築して推計を行った。日本企業によるオフショアリングや海外直接投資が増大する中、それが労働者の賃金をどのように変化させるか、労働者のカテゴリー別に検討することは、国際化のベネフィットをより多くの人々に均霑させるために有用である。本研究で用いる「企業・労働者接合データ」は、経済産業省の「企業活動基本調査」、厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」、総務省の「事業所・企業統計調査」と「経済センサス基礎調査」から構築し、1999年から2013年までの賃金データをカバーする。本研究では、労働者の学歴はスキルの水準を、労働者の性別はスキルの分野を、それぞれ表すとする。大卒の労働者はより高いスキルを持ち、女性の労働者は対人知識・非管理系業務により豊かなスキルを持つ。 分析の結果、ある企業によるオフショアリングの増加がその企業で働く労働者の時間当たり賃金や年間所得に与える影響は、高卒男性では統計的に有意な影響はないが、大卒では増加し、女性では減少した。他方、輸出の増加が労働者の時間当たり賃金や年間所得に与える影響は、高卒男性では影響はないが、大卒では減少し、女性では増加した。加えて、オフショアリングと輸出が女性労働者の年間所得に与える影響は、時間当たり賃金に与える影響よりも小さい。このような、オフショアリングと輸出で影響が逆になることや、年間所得の方が変動が小さいことは、企業の海外取引が賃金に与える影響の一部を企業内労働市場が緩和していることを示唆する。