【要旨／ハイライト】
本研究では、公的介護保険給付の縮小が家族介護者の身体的精神的ウェルビーイングにどのような影響を与えるかを分析した。本研究では、2006年の介護保険制度改革において、公的介護保険給付の縮小の影響を受けた一部の受給者とその家族介護者への影響に焦点を当てた。国民生活基礎調査の個票データを用いて、改革後にどの程度の影響があったのか、また影響が時間の経過とともにどのように変化するかについて検証した。分析の結果、給付の縮小が家族介護者のウェルビーイングに悪影響を及ぼしたことが示された。この悪影響は特に女性の介護者に顕著であった。さらに、追加分析によりこの改革は介護サービス受給者のウェルビーイングにも悪影響を及ぼすことが示され、公的介護保険給付の削減は、家族介護者・要介護者の双方に良い影響を与える可能性が低いことが示された。本研究の結果は、公的介護保険給付縮小の費用対効果を評価する際に、介護者・要介護者の両方のウェルビーイングを考慮することの重要性を示唆している。