超低金利環境下における金融政策の有効性:日本のイールドカーブ変動による検証

著者: 白塚重典
発行日: 2021年6月12日
No: DP2021-012
JELコード: E43, E52, E58, G12
言語: 英語
【要旨/ハイライト】

本論文では、日本の超低金利環境下における金融政策の有効性について、イールドカーブ変動を通じて検証する。そのために、動学的ネルソン・シーゲルモデルを用い、金融政策の緩和効果を捕捉するための指標を構築する。超低金利環境でのイールドカーブ変動を捕捉するためには、水準、傾き、曲率というイールドカーブの変動要因に加えて、長期水準への収束速度をコントロールするローディングパラメータも時変化することが有効である。しかしながら、金融政策の効果を評価する上では、水準とローディングパラメータの識別が重要となる。特に、量的・質的金融緩和政策(QQE: Quantitative and Qualitative Monetary Easing)のもとでの金融緩和効果は、10年以上の超長期ゾーンのイールドカーブをフラット化することで産み出されているが、満期10年までのゾーンからの緩和効果はほぼ変化していない。この推計結果は、現在の超低金利環境下においては、非伝統的な金融政策を本格的に実施したとしても、金融政策だけでは、標準的なマクロ経済安定化政策の時間視野の中では十分な緩和効果を生み出すことを示している。