所得の世代間弾力性:JHPS第二世代付帯調査による分析

著者: 赤林英夫、直井道生
発行日: 2021年3月31日
No: DP2021-007
JELコード: D12, D31, J62
言語: 日本語
【要旨/ハイライト】

本稿では、JHPS第二世代付帯調査を利用して、所得の世代間弾力性の推定を行った。分析の結果からは、以下の点が示される。第1に、所得の世代間弾力性の推定値は0.26~0.29であり、米国や英国における推定値よりは小さい一方、北欧各国の推定値よりは大きい結果となった。また、男女別にみると、所得の世代間弾力性は女性よりも男性で大きい。第2に、子世代の学歴をコントロールすることで男性サンプルの世代間弾力性は小さくなる一方、女性サンプルの弾力性には明確な影響がないことが確認された。これは、特に男性については、学歴が所得の世代間連関を媒介する要因として働いていることを示唆する。第三に、地理的・空間的要因と所得の世代間連関に関する分析からは、親との同居や親子の近接性は所得の世代間連関を大きくする方向に働くことが示される。一方で、親の居住地情報を用いた分析からは、親が大都市に居住しているサンプルで世代間弾力性が大きくなることが示される。これらの結果は、いずれも諸外国における既存の結果と整合的であるものの、その背景にどういった経路が存在するのかについては、今後より詳細な分析が必要であることが指摘される。