統合的保全開発プロジェクトによる生物多様性保全:非営利型国立公園と利潤追求型国立公園における生物経済モデルでの比較分析

著者: 謝子晋、大沼あゆみ
発行日: 2021年1月4日
No: DP2021-001
JELコード: Q29, Q56, Q57
言語: 英語
【要旨/ハイライト】

統合的保全と開発プロジェクト(Integrated conservation development projects : ICDPs)は、生物多様性保全と地域発展の両立を目指すプロジェクトである。ICDPは、生物多様性保全に対する地域住民からの支持を得るために、地域住民が生物多様性管理に参加したり、地域住民に補助金を与える形態をとることが多い。 ICDPsの生物多様性保全の効果に関する資源経済学の立場からの先行研究も存在する。しかし、これらの研究では、国立公園の生物多様性管理に地域住民の雇用を考慮していない。さらに、国立公園は、一般には非営利組織とみなすことができるのに対し、利潤追求型の国立公園が想定されてきた。本研究では、国立公園の行う観光に地域住民を雇用する形態のICDPsが、非営利型・利潤追求型国立公園で実施される時の生物多様性保全の効果を分析した。その結果、ICDPsを導入することが、生物多様性を増加させる条件を示した。また、生物多様性が地域住民の農業生産を促進する場合、非営利型国立公園は常に利潤追求型国立公園より高い生物多様性、および地域住民に高い効用をもたらす。しかしながら、生物が農業に被害を与える場合、利潤追求型国立公園は、非営利型国立公園より地域住民に高い効用をもたらし、生物多様性も高くなる可能性があることを明らかにした。さらに、賃金率に対する補助金や課税によって、社会的最適が市場均衡で達成されることを示した。