消費者物価指数の精度向上に向けて:長期にわたり積み残されている課題の再検討

著者: 白塚重典
発行日: 2023年1月4日
No: DP2023-001
JELコード: C43; C82; E31
言語: 日本語
【要旨/ハイライト】
本稿では、わが国消費者物価指数(CPI: Consumer Price Index)の一段の精度向上に向けての課題を検討する。わが国CPIは、2000年基準改定以降、いくつかの重要な価格精度向上に寄与する取り組みがみられており、計測誤差は大きく縮小していると考えられる。もっとも、CPIの上方バイアスについては、その大きさを固定的なものと考えることは適当でなく、統計作成法の改善、基準年からの時間的経過や経済環境の変化によって変動するとの視点を持つことが重要である。引き続きわが国CPIの精度向上を図っていくためには、財・サービスの多様化、オンライン販売も含めた販売チャネルの拡大とそれを活用した非線形価格設定や購入者ごとの値引き販売など、従来の店舗訪問による店頭での価格調査では捉え切れない課題がより重要となりつつある。このため、価格調査における一品目一調査銘柄主義を抜本的に見直し、CPIにおいても既に一部品目の価格調査に活用されているPOSデータやウエブスクレイピングデータなど代替的な価格情報源の活用範囲を拡大させていく方向性を検討する。その場合、代替的な価格情報により調査価格数を拡大させると同時に、品目定義の見直し、下位集計方式の幾何平均化などを併せて実施することで、価格の代表性向上を通じた指数精度向上を図っていくことの重要性を指摘する。