政治経済学の現在:理論と実証

       

内容

政治現象の多くの背後には経済的動機があり、また、政治的決定は経済的行動に影響を及ぼし、政治と経済は複雑に結びついています。これに平仄を合わせるように、政治学と経済学では、ともに ゲーム理論の術語を用いた理論分析が行われ、実験アプローチや構造推定アプローチといった計量・統計分析手法が活用されています。本ワークショップでは、このように密接に関連している政治学と経済学の双方から、理論と実証のそれぞれで業績を挙げつつある気鋭の研究者に発表の機会を設け、発表と討論を通じて両者の融合と発展への寄与を目指します。また,基調講演者として,政治経済学の理論・実証の両面で指導的な役割を果たしてきたカリフォルニア大学アーバイン校のアミハイ・グレイザー教授を招聘します。

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場所

三田キャンパス
南校舎 443教室
     

備考

協力:野村財団・21世紀文化学術財団
       

更新日

2014/07/05(土)

イベント開催報告

去る7月5日(土)に、カリフォルニア大学アーバイン校のアミハイ・グレイザー教授を招聘し、『政治経済学の現在:理論と実証』ワークショップが三田キャンパスで開催されました。このワークショップは、ゲーム理論という理論分析手法や、回帰分析をはじめとする統計分析手法を共有し、密接に関連している政治学と経済学の双方、とくに業績を挙げつつある気鋭の研究者からの発表と討論を通して相互理解を深めることにありました。

第1セッションでは、アミハイ・グレイザー教授(カリフォルニア大学アーバイン校)から、政策実験の実施が過少となり、政策選択が横並びになりやすいメカニズムについての理論分析の結果が報告されました。また,石田良氏(財務省)からは自発的な排出削減メカニズムの柔軟性と効率性についての理論的検討結果が発表されました。
第2セッションでは紛争にまつわる理論分析が紹介されました。まず浅古泰史講師(早稲田大学)は、政府と反政府軍とのあいだの停戦と停戦の破棄のタイミングが選挙によっていかに影響されるかについての理論分析が報告され、選挙は和平交渉を開始させやすくするとともに停戦の破棄をも早める傾向があることが示されました。次に、栗崎周平准教授(早稲田大学)から、政治学で用いられる展開型ゲームを用いた同盟の分析が説明され、またこれを集団的自衛権の行使に応用した分析例が示されました。
第3セッションは大学院生の発表でした。まず須佐大樹氏(名古屋大学)が、技術水準が非対称な2地域における戦略的委任に関して、中位投票者とは異なる交渉者が選ばれるメカニズムについて報告しました。次に安藤道人氏(ウプサラ大学)が、中央政府からの補助金の影響の大きさについて、日本とスウェーデンの準実験的状況を用いて計測した結果を報告しました。
第4セッションでは、松林哲也准教授(大阪大学)が、景気循環が投票率に及ぼす影響についてアメリカの州別および個票データを用いた分析から、不況が投票率を上昇させる効果を持つとの結果を提示しました。

参加者は関東圏のみならず関西・東海・東北・中国地方から40名近く集まり、いずれの報告についても活発な質疑が行われました。講演者・参加者のみなさんからは普段接する機会の少ない分野の報告を聞く有意義な講演会であったとの感想を多くいただきました。講演者・参加者・主催者にとって今後の研究への数多くの知的刺激を受けるよい機会となったと言えるでしょう。