福澤諭吉記念経済学特別講義

Hugo F. Sonnenschein

動機付けと効率性

日時

2015.10.9 [金] 午後3:00~4:00

会場

慶應義塾大学三田キャンパス図書館旧館二階大会議室

講師紹介

ソンネンシャイン教授は、ミクロ経済学理論の世界的な権威であり、その研究業績は多岐に渡りますが、その代表的なものの1つが、ソンネンシャイン‐マンテル‐デブリューの定理に代表される、ミクロ経済学の根幹をなす一般均衡理論における貢献です。「市場超過需要関数が、ワルラス法則と連続性という2つの性質を満たすことが、個別消費者の効用最大化行動から導かれるが、逆に、この2つの性質を満たす関数を任意に与えたとき、それをその市場超過需要関数とするような経済モデルは存在するのか?」という根源的な問いにソンネンシャイン教授が初めて挑戦し、マンテルとデブリューが肯定的な答えを完成させたことで、一般均衡理論の枠組みがある意味で完成したと言えます。また、もう1つは、社会的選択理論における貢献で、マスコレル‐ソンネンシャインの社会的決定関数についての不可能性定理(社会的選好に推移律まで要求しなかったとしても、民主的かつ合理的な関数は存在しない)を証明されましたが、それに留まらず、不可能性の解消へ向けても重要な研究をされています。さらに、ソンネンシャイン教授はゲーム理論においても多大な貢献をされています。例えば、コースの予想に関する、今や基本的文献となっている論文を発表されましたが、これは動的ゲーム理論発展の一翼を担った論文として長く引用され続けていますし、ルービンシュタインによる交渉ゲームと一般均衡を関連付けるという斬新な発想による研究もあります。ソンネンシャイン教授は現在も精力的に研究を続けられており、交渉ゲーム、インセンティヴ問題等についての論文を発表し続けられています。

対象者

講義内容は学部上級の経済学の知識を前提とし、主として義塾学生及び研究者を対象にしていますが、大学院生・研究者の方であれば、どなたでも参加できます。

備考

使用言語    英語
主  催    慶應義塾大学経済学部・経済研究所
お問い合わせ  経済研究所事務局 TEL.03-5418-6433
                 ies-office(at)adst.keio.co.jp

イベント開催報告

ヒューゴ・ソンネンシャイン教授

2015年10月9日(火)に、慶應義塾大学経済学部及び付属経済研究所の主催により、シカゴ大学元学長、同大学経済学部チャールズ・ハッチンソン特別名誉教授のヒューゴ・ソンネンシャイン教授による特別講義「動機付けと効率性」が三田キャンパス旧図書館大会議室にて行われました。
講義に先立ち、ソンネンシャイン教授には慶應義塾より名誉博士号(経済学部推薦)が授与されました。特別講義は、多数の名誉教授、学内外の経済学研究者及び大学院生、学部生、シカゴ大学関係者が参加され、盛況な中で行われました。
ソンネンシャイン教授は、シカゴ大学が創立後3年目の1893年に最初に授与した博士号は日本人へのものだったという、シカゴ大学と日本とのつながりから話を始められました。教授は、経済学だけでなく社会科学の中心的関心の一つは、社会の構成員の私的動機がどのように社会全体の効率性につながるかという問題であることを指摘され、経済学においては、アダム・スミスから始まり、アロウ、デブリュー、マッケンジーらの一般均衡理論によって「完全競争市場においては私的動機に基づいた経済行動の結果は需給が均衡し、しかも社会的効率性に結びつく」ことが証明されたことを説明されました。その後、ご自身の研究に話を進められ、ソンネンシャイン・マンテル・デブリューの定理の意義、バブルなどの需給が大きく乖離した現象から、価格受容者による市場理論の限界に触れられました。後半では、ナッシュの戦略的交渉理論をソンネンシャイン教授とその共同研究者の方々が拡張した新たな結果として、売り手と買い手がお互いの私的動機を完全に知らなくても効率的な取引が可能であるという最新の理論的成果を解説されました。

司会:グレーヴァ香子教授

非常に高度な数学的理論でありながら、教授の説明はわかりやすく、しかも正確であり、研究者も含めた聴衆全体に感銘を与えるものでした。
講義の後には、学内外の経済学研究者、大学院生、留学生、シカゴ大学関係者を交えた懇親会が開催され、講義の内容や経済問題について活発な議論が交わされました。

イベントの動画

IES主催 【福澤諭吉記念経済学特別講義】 動機付けと効率性