時間選好と抑うつ傾向の関連性
The Relationship Between Time Preference and Depressive Tendency

著者: 藤野 玲於奈
発行日: 2017年3月23日
No: DP2017-006
JELコード: D03,D04
言語: 日本語
【要旨/ハイライト】

本研究では,JHPS(Japan Household Panel Survey)とJSTAR (Japanese Study of Aging and Retirement)を用い,時間選好と抑うつ傾向の関連性を検証した.実証研究には,Finkel (1995)で議論されている交差遅れ効果モデルや同時効果モデルを応用し,ベクトル自己回帰モデルでのグレンジャー因果関係を検証した.分析の結果,JHPSデータにおいて,抑うつ傾向から時間割引率という方向のグレンジャー因果性があるという結果を得られた.また,年代別に分けた推定では,50代以上に関してのみこの因果関係が確認された.この結果は抑うつ傾向が時間選好に影響を与えていくことを示唆し,このことは抑うつ傾向への対処が時間選好の変化を可能にすることを意味するといえる. 近年では,抑うつ傾向への対策が進みつつあり,そのような対策は時間選好への変化,すなはち,時間割引率の減少へとつながると実証結果は示したと解釈できる.このような時間選好の変化に関しては,Bhatt et al.(2015)の枠組みで徳倫理の観点を用いれば望ましいといえる.