ベトナムにおける公的医療保険拡大期における需要と供給の変化:皆保険達成にむけての課題と政策的示唆
Analysis on Demand and Supply-side Responses during the Expansion of Health Insurance Coverage in Vietnam: Challenges and Policy Implications toward Universal Health Coverage
著者: 松島みどり、山田浩之、島村靖治
発行日: 2016年5月23日
No: DP2016-013
JELコード: I13, I18
言語: 英語
【要旨/ハイライト】
現在,途上国や新興国では公的医療皆保険の達成は大きな課題であり,本論文は,その課題に早くから取り組んでいるベトナムにおいて,どのように需要と供給が変化しているかを分析したものである。分析には,2006年から2012年の2年おきの県ごとのデータを用いた。分析の結果,公的医療保険加入率の増加に伴い,医療機関利用者数は増加したもののその増加幅は非常に小さく,供給については,変化はほぼ皆無であることが示された。加えて,医療従事者数については県病院で増加し,コミュニティの診療所で減少している傾向が見られた。また,追加分析を行った結果,公的医療保険の拡がりは家計の医療支出額を減少させていないことが明らかとなった。これらの結果から,ベトナムにおける公的医療保険の拡大が医療施設利用を促していない理由として,供給側の要因が考えられること,そして家計の医療費負担は緩和されていないことが示唆された。