ニューヨーク市における地方所得税の現状と改革論―応能負担の重視とその政治経済的背景―
Current Status of the Local Income Tax in New York City        
        
          著者: 谷 達彦        
        
          発行日: 2016年3月29日        
        
          No: DP2016-007        
        
          JELコード: H71, H24        
                
          言語: 日本語        
        
                  
        
        
          【要旨/ハイライト】
        
          
  本稿では、ニューヨーク市における地方所得税の現状と改革論の特徴を明らかにしたうえで、応能負担を重視する地方所得税の改革論が展開されている政治経済的背景を検討した。ニューヨーク市では累進的な地方所得税が課税されており、近年、低所得層への減税および高所得層への増税によって地方所得税の累進的負担をさらに強化することを主張する議論が強まっている。その経済的背景として、上位1%の高所得層に所得の4割が集中しているという大きな所得格差の存在がある。また、政治的背景として、民主党支持者が多く、所得格差の是正策を支持する者が多い黒人やヒスパニックが投票者の多数派を占めるようになったことがある。ニューヨーク市では、地方税理論において望ましい地方所得税のあり方とされる応益課税としての比例的な地方所得税とは異なる地方所得課税が展開している。
              
          