⼩売市場におけるシュリンクフレーションのシステマティ ックレビュー
著者: 本多 将大
発行日: 2025年4月30日
No: DP2025-007
JELコード: D12, D22, L11, M31, E31
言語: 日本語
【要旨/ハイライト】
本研究は,シュリンクフレーション(製品サイズを縮小しながら価格を据え置くことで実質的な単価を引き上げる戦略)についての包括的なシステマティックレビューである。この戦略は消費者に直接的な価格上昇を感じさせずに利益を増加させる手段として,小売市場で広く採用されている。先行研究を(1) シュリンクフレーションの要因(インフレーション、コスト転嫁、消費者の不注意)、(2) 企業戦略としてのシュリンクフレーション(サイズ弾力性、サイズ・価格・品質のトレードオフ、パッケージデザイン)、(3) シュリンクフレーションの影響(マクロ経済的影響、不公正感、単価表示)の3つのテーマで体系化した。結果として,シュリンクフレーションによる需要のサイズ弾力性は0.12-0.80の間で価格弾力性よりも概ね小さく,利益確保のための有効なコスト転嫁戦略となり得る。一方で,この手法は顧客離反や消費者厚生の低下を招く可能性があり,その対策として単価表示や情報提供などの透明性向上が効果的であると判明した。最後にプライシング研究からの知見を踏まえた今後の研究指針,及び企業戦略,政策規制への示唆を議論した。