職場におけるただ乗り問題、ワークプレイス・デモクラシー、そして労働者の私的行動の抑制に関する考察(リアル・エフォート実験からの事実)

著者: 亀井 憲樹、ケイティ・タベロ
発行日: 2023年4月27日
No: DP2023-011
JELコード: C92, D02, D72, H41
言語: 英語
【要旨/ハイライト】
企業組織において「チーム」は典型的な意思決定ユニットであり、また作業ユニットでもある。本論文では、斬新なリアル・エフォートタスク実験をもとに行動データを収集することで、(A)どの程度、チームがグループ最適の実現のためにメンバーの私的行動を抑制することを選び、また(B)ワークプレイス・デモクラシーが労働生産性向上にどう寄与するか考察した。経済実験に参加した被験者は3人1組のチームに割り振られ、他の2チームとグループを構成し、グループでのレベニュー・シェアのもと、リアル・エフォートタスクに取り組んだ。各メンバーは、タスク期間中に、他のメンバーに知られることなく、怠業、つまり、テトリス・ゲームをプレイすることが出来た。本研究では、各グループに怠業インセンティブを減らすポリシーがランダムに導入される『非民主的な』トリートメントと、民主的に導入の可否が決定される『民主的』トリートメントの2種類が実施された。実験結果によると、非民主的トリートメントに比べ、民主的トリートメントで統計的に有意なレベルの強い労働時間当たりの生産が実現した。この正の効果はポリシー導入の可否によらず観測された。このことは民主的カルチャーが人々の行動に直接正の作用を及ぼしたことを意味する。一方で、ワークプレイス・デモクラシーにより、(強い労働による疲労を受けた)労働者の怠業時間が増大した。しかしながら、労働時間当たり生産性の増大を受け、『民主的』トリートメントで生産が減少することはなかった。