共同体メカニズムの経済学

著者: 大垣 昌夫
発行日: 2023年3月10日
No: DP2023-004
JELコード: A10, D01, D04
言語: 日本語
【要旨/ハイライト】
本稿では、危機の時代における経済システムにおいて、市場メカニズムと権力メカニズムを補完する共同体メカニズムの重要性について論じる。 共同体メカニズムとは、「少なくとも一人が自発的に協力を申し出て拒否されないメカニズム」と定義される。共同体メカニズムは、ホモ・エコノミカスの間ではWin-Winの状況で機能するが、利他主義や互恵主義などの社会的選好や、協力を促す規範や世界観があれば、さらに活性化する。これらに関連する要因は他にもある。共同体や社会に貢献する人格的な強さを「徳」と呼び、徳に関連する幸福の概念を「エウダイモニア」と呼ぶ。徳の獲得には選好の変化という側面もあり、信頼感の変化が選好の変化に関係していることを示唆する実証的な証拠もある。リーダーシップは正義の徳の一例であり、サーバント・リーダーシップは共同体メカニズムにとって重要であると思われる。視点転換は共同体メカニズムの多くの面で重要な役割を果たしているようである。 可能な政策を評価するためには、経済効率性等の厚生主義のみに基づく規範的経済学では不十分であり、共同体メカニズムが重要である場合には徳倫理も考慮することが重要であると考えられる。