自己制御資源と罰則制度遂行:実験室内実験からの事実

著者: 亀井憲樹
発行日: 2022年9月26日
No: DP2022-014
JELコード: C92, D72, H41
言語: 英語
【要旨/ハイライト】
本論文は、人々の自己制御資源の状態が社会的ジレンマ下におけるグループでの正式な罰則制度の遂行に影響を与えることを、実験室内実験の手法を用いて提案する。経済実験結果によると、自己制御資源が摩耗していない時には、過半数以上が(正式な罰則に頼らず)分権的なモニタリングとピア・ツー・ピアの罰則でジレンマを制御する決定をし、実際に高い協力を実現した。一方で、自己制御資源が摩耗し小さい場合には、過半数以上が、コストがかかるが規範逸脱者が自動的に罰則を受ける正式な罰則制度に投票・導入し、そのもとで、非協力者に対して抑止力のある強い罰則率を設定することで高い協力を実現した。外部妥当性を高めるため、新型コロナ危機に関するアンケート調査を補足として行ったが同様のパターンが観測された。これらの結果は不平等を嫌う選好とセルフ・コントロール選好から予測されるコミットメント行動によって説明できる。この行動経済理論によると、自己制御資源が小さい人は、コミットメント装置として、ただ乗りをする誘惑を投票を通じて事前に取り除くことで相互協力の実現を容易にし効用を高めようとする。本研究からの事実は、社会的ジレンマの文脈でのコミットメント行動の重要性を示していると解釈することができる。