日本の金融教育がリスク性資産投資選択に及ぼす不均一な影響に係る実証分析

著者: 荒木 宏子、ファン N. マルティネス ダブラ
発行日: 2021年9月3日
No: DP2021-018
JELコード: G02, D14
言語: 英語
【要旨/ハイライト】

本稿は「金融リテラシー調査」を用いて、日本人の金融教育経験と金融市場への参加との関係を分析した。推計には Finite Mixture Modelを採用し、個人の投資行動に係る観察不能な不均一性を仮定した。異質な行動モデルを持つ部分集合(classes)への所属の事前確率は、年齢、教育年数、経済状況などの社会人口学的特性の関数として定義し、各クラスにおける家庭または学校・職場での金融教育経験とリスク性資産への投資経験との関係を、その個人の金融リテラシー(項目反応理論推計値)や他の行動特性を制御した上で推計した。分析の結果、明らかに他のクラスとは異なる投資行動の特徴を持つ、より若く、貧しく、教育年数の低い集団があることが示された。さらに、学校や職場での教育は、あらゆる人のリスク資産への投資確率と有意に正の相関があるが、家庭での金融教育の影響はより異質であり、最も経済的に脆弱な人々に対してのみ、リスク性資産への投資を踏みとどまらせる可能性があることも示された。今回の結果は、金融教育プログラムの設計における重要な課題を提供するものと考えられる。