「偉大な社会」政策とアメリカ連邦租税政策アメリカ財務省による租税支出概念の構想と1969年連邦税制改正
Tax Policy for Great Society Programs: Tax Expenditure and the Failure of Comprehensive Tax Reform in the United States in 1969
著者: 茂住政一郎
発行日: 2017年3月28日
No: DP2017-009
JELコード: H2, N42
言語: 英語
【要旨/ハイライト】
1969年12月30日、リチャード・ニクソンは、もともとはリンドン・ジョンソンが大統領であった時期の財務省によって考案された、1969年税制改正法に署名した。この税制改正に触れているある論者は、この税制改正は、連邦税制を幾分か、公正、簡素かつ公平なものにしたと評価し、また他の論者は、その成立過程は、包括的税制改正成立がいかに困難であるかを例証したと評価してきた。それに対し本稿は、この税制改正を巡る、財務省と議会内民主党員といった税制改正支持派とジョンソン政権の対立を分析する。包括的税制改正に消極的だったジョンソン政権、とりわけ、「飼いならされたケインズ主義」に基づいて臨時増税を主張していたCEAは、この税制改正の提案と成立をニクソン政権期まで遅らせ、財務省が「租税支出」概念に基づいて考案した税制改正を失敗に追い込んだ。もし、ジョンソン政権による支持があったならば、1969年税制改正法は、連邦税制をより公正かつ公平なものとし、1964年のケネディ・ジョンソン減税によって破壊された「租税と支出の結びつき」を取り戻せる可能性があった。