オープンアクセス下の再生可能資源と都市失業:小国開放経済における2つの制度的失敗
Open-access Renewable Resources and Urban Unemployment: Dual Institutional Failures in a Small Open Economy

著者: 大東一郎、樽井礼
発行日: 2016年3月30日
No: DP2016-009
JELコード: O13, Q27, F18
言語: 英語
【要旨/ハイライト】

本論文の目的は、二重経済構造を持つ発展途上国において、都市での貧困削減と農村での環境資源保全とが両立するという意味での「持続可能な開発」がどのような場合に可能なのかを解明することである。はじめに、工業部門での賃金硬直性による都市失業と農村部門での再生可能資源(例:森林)のオープンアクセスによる過大利用とが共存する経済では、これら2つの制度の失敗を補正する最適政策が「都市賃金補助金と農村所得税」となりうることを示す。これは、Bhagwati and Srinivasan (1974)による二重経済での伝統的な最適政策(都市・農村への同率の賃金補助金)が、農村生産がオープンアクセス下にある資源に大きく依存する途上国については修正されることを意味する。次に、農村資源財への輸出税を引き上げると、既存研究とは逆に、都市失業率は必ず低下し経済厚生を改善する効果をもつ。これより、農村での資源保全は基本的には都市での貧困削減と両立しうる。だが、都市失業者数は、当初の輸出税率が低いときには増大する。最後に、当初自由貿易が行われているとき、農村資源財への輸出税を引上げると、2つの制度の失敗による資源配分上の歪みは弱められ、経済厚生は必ず改善される。これは、森林破壊の進む途上国で林産物の輸出税が実施されている事例と整合的である。