経済格差と教育格差の世代間の流動性の国際比較研究に向けて:日本子どもパネル調査に基づく発見

著者: 赤林英夫、中村亮介、直井道生、敷島千鶴
発行日: 2015年9月29日
No: DPDP2015-010
JELコード: D31, I24, J13
言語: 英語
【要旨/ハイライト】

過去数十年にわたり、先進国の多くで経済格差の拡大が進んだ。同時に、国際比較可能な大規模調査データの普及が後押しになり、経済格差と教育格差の固定化(あるいはその逆にモビリティ)の国際比較に対する関心が高まっている。本論文の貢献は以下の3点である。第一に、日本子どもパネル調査(JCPS)を紹介する。子どもの認知・非認知能力と豊富な家計情報を兼ね備えた、我が国で始めての小中学生の追跡調査データであるJCPSは、子どもの学力と社会的適応、家庭背景、地域環境の動的な関連を解明するために開発され、国際比較も可能な設計となっている。第二に、JCPSに基づいて得られた、認知・非認知能力の格差の動的な関連についての結果をいくつか紹介する。分析結果は、両親の所得階層間の学力格差の変化、学力の固定化の程度、親の学歴と問題行動スコアの関係などにおいて、米国、英国、オーストラリア、ドイツとかなり似通っていた。最後に、JCPSの経験に基づいて、教育研究の国際化が必要な理由、国際化のための戦略などを議論し、経済格差と教育格差の動態に関する国際的な比較研究に加わることの意義を提起する。