賃金の不平等と同僚との関係性:労働市場の選別に関するフィールドからの新たな事実
著者: スバシシュ・ドゥガル、亀井 憲樹
発行日: 2025年9月18日
No: DP2025-020
JELコード: C93, J31, M52, D81
言語: 英語
【要旨/ハイライト】
競争に基づく成果給は生産性を高める一方で、同僚間の負の相互作用を招き、それが労働者の報酬制度に対する選好に影響を及ぼす可能性がある。本研究は、インドの野菜包装労働者を対象としたフィールド実験を通じて、サボタージュ(同僚間の妨害行為)のリスクが労働者の制度選択に与える影響を検証するものである。実験ではまず、報酬総額は同一だが分配の不平等度のみが異なるトーナメントに労働者を外生的に割り当てて作業させ、その後、経験した制度のいずれを好むか選択させることで、内生的ソーティングに関する独自のデータを収集した。公平な第三者による評価が行われる環境では、労働者は報酬格差の大きいトーナメントを選び、不平等や競争を忌避する傾向は見られなかった。これに対し、同僚同士が互いに評価するピア評価の環境では、報酬格差の拡大に伴い過小評価などのサボタージュが急増し、労働者はより公平な制度を選好するようになった。本研究は、労働市場におけるソーティングの根本要因としてサボタージュ・リスクを位置づけるとともに、同僚間の破壊的な相互作用が職場における賃金構造の圧縮を合理化しうることを示している。