日本における中間層の推計:1994-2009年
著者: 田中聡一郎、四方理人
発行日: 2019年1月7日
No: DPDP2019-001
JELコード: D31,H24,I32
言語: 英語
【要旨/ハイライト】
本研究は、1994年から2009年にかけての日本における中間層の推移とその特徴について検討したものである。各年における中位所得の75%から200%の水準を中間層とした場合、日本の中間層は65%程度の水準で推移していた(1994年は67.29%、2009年は65.21%)。しかしながら、中間層の所得域を1994年の水準に固定した場合、2009年の中間層の割合は59.47%まで低下した。また、その中間層の割合が低下すると同時に、上層の割合も低下する一方、下層や貧困層の割合が上昇していた。したがって、中間層の割合が安定的であった理由は、日本の所得分布全体が低下したことによると考えられるだろう。 次に、中間層の特徴として、生産年齢人口(18-64歳)における中間層の割合が、老齢人口(65歳以上)における中間層の割合より高く、今後の老齢人口割合の上昇に伴い、全体での中間層の割合が低下することも考えられる。また、人口の高齢化は、再分配政策の結果にも影響を与えている。年金等の社会保障の効果により社会的移転が総所得に占める割合は上昇している。それに加えて、日本における平均的な世帯所得が低下しているのも関わらず、所得課税(所得税+社会保険料)の負担割合は一定の水準を維持している。これは、社会保険料率が上昇していることによると考えられる。