移転価格を操作する多国籍企業の生産立地選択:独立企業原則の影響
Production Location of Multinational Firms under Transfer Pricing: The Impact of the Arm's Length Principle

著者: 加藤隼人、大越裕史
発行日: 2017年4月28日
No: DP2017-016
JELコード: F12, F23, H25
言語: 英語
【要旨/ハイライト】

垂直統合された多国籍企業はどのような状況下において、最終財生産を行う国と異なる国で中間財生産を行うのであろうか。多国籍企業が各財の生産を別の国で行うケースでは企業内取引価格を操作することで利潤を移転することができるため、多国籍企業の生産地選択は、企業本部の立地する自国と子会社の受け入れ国との法人税の差に依存する。本研究では、この税率の差が小さいケースでは最終財が生産される国で中間財も生産されることを示した。さらに、中間財の企業内取引価格は非関連企業との取引価格と同一であるべきだという独立企業原則が生産地選択に与える影響についても考察し、独立企業原則が課されることで生産地の選択が変わる可能性があることがわかった。この生産地選択の変化は受け入れ国の税収を下げるが、一般的に世界全体の税収を増加させることにつながる。