福澤諭吉記念経済学特別講義

Richard Baldwin

脱国境の時代におけるグローバリゼーション

日時

2016.12.14 [水] 午後2:45~4:00

会場

慶應義塾大学三田キャンパス 東館6階G-sec Lab

講師紹介

ボールドウィン氏は、マサチューセッツ工科大学でポール・クルーグマン教授(2008年ノーベル経済学賞受賞)の指導の下、経済学博士号を取得した後、1991年よりジュネーブ国際問題高等研究所教授の職にあります。
国際貿易や空間経済学(新経済地理学)、欧州統合、経済統合に関する数多くの世界的なジャーナルでの刊行論文、著作があり、特に空間経済学に関する著作(Economic Geography and Public Policy)は世界的に広く利用される教科書となっています。1990年から91年にはアメリカのブッシュ政権下において大統領経済諮問委員会のシニア・スタッフ・エコノミストを務められたほか、EU、OECD、世界銀行など国際機関対象のコンサルティングなども手がけています。近年ではCEPRにおいてディレクターを務めており、国際的な先端研究をハイライト版でいち早く世界に発信するVoxEUの創始者としても知られ、経済学の進展に大きく尽力されています。グローバリゼーションが進む今日、学術的貢献や政策的な提言は諸外国の政策担当者や国際機関からも大きく注目されています。

対象者

講義内容は学部上級の経済学の知識を前提とし、主として義塾学生及び研究者を対象にしていますが、大学院生・研究者の方であれば、どなたでも参加できます。

備考

参加ご希望の方はフォームでの登録が必要です(12月9日締切)
https://goo.gl/forms/K7Jd93IJs2ZXsT5t1
使用言語    英語
主  催    慶應義塾大学経済学部・経済研究所
お問い合わせ  経済研究所事務局 TEL.03-5418-6433
                 ies-office(at)adst.keio.co.jp

イベント開催報告

リチャード・ボールドウィン氏

司会:大久保 敏弘教授(経済学部)

去る2016年12月14日、慶應義塾大学経済学部および経済研究所主催により、リチャード・ボールドウィン教授(ジュネーブ国際問題高等研究所)による特別講義が行われた。福沢諭吉記念経済学特別講義として盛大に開催され、「脱国境の時代におけるグローバリゼーション」をテーマに東館6階G-secラボにて行われた。主に国際経済学を専攻している、およそ150人以上の学部生や大学院生、学内の研究者、教員が集まり、部屋は満員で非常に盛況だった。
レクチャーの内容はボールドウィン教授の最近書かれた著書「The Great Convergence」をもとにしたものだった。著書と同じく複雑な数式や理論は一切なく、図を多用し、きわめて明解に鮮やかに最近のグローバリゼーション、世界経済の動向をコンパクトにまとめた内容だった。
レクチャーでは最初に長期の世界の経済成長を概観した上で、産業革命以降、1990年代以前までは、先進国が大幅に成長し、一方で発展途上国では成長が鈍化し、両者の格差は大きくなる一方だった。いわゆる、経済の大発散、Great Divergenceと呼ばれている。しかし1990年以降は中国やインドの急速な経済発展を背景に、さらにアメリカや日本の伸び悩みにより、先進国と発展途上国の格差が一気に収束へと向かっている。いわゆる「経済の大収束」が起こっている。この背景には、情報技術の発展により、生産工程やタスクの国際間分業が活発化し、先進国から生産拠点が発展途上国に移ったことによる。これをボールドウィン教授は「第二のアンバンダリング」と呼んでいる。
彼の講義は非常に明解であり、学部の学生でも十分理解できる内容であり、学生や研究者の知的好奇心を大いに刺激した。また、今日の世界経済への様々な提言や鋭い分析を含むものであった。講義の後、多くの学生が様々な質問をし、所定の時間を超えて活発な議論が行われた。

イベントの動画