Peer Interactions in Teams and their Spill-over Effect: Evidence from a Natural Field Experiment
著者: モンゴルジン バトサイハン、亀井憲樹
発行日: 2025年5月14日
No: DP2025-008
JELコード: C93, J24, M53, M54, I23
言語: 英語
【要旨/ハイライト】
チームベースで行う協働は、教育活動、職場、日常生活において不可欠であり、それは、ピアとの議論、社会的比較や知識の共有を通じて、能力に基づくピア効果を醸成する。特定の文脈におけるピア効果に関する事実は数多く存在するが、ピア効果が類似の異なる活動に波及する可能性については十分に研究されていない。そこで本研究では、モンゴルの大学における授業科目を用いた自然フィールド実験、同大学での大学入試スコア、そして大学でのGPA(成績平均値)情報を組み合わせた斬新なミクロ・データを用いて、ピア・ラーニングの効果の波及現象を分析した。大学1年生は、彼らの必須科目(ミクロ経済学入門)において、それぞれランダムに他の学生と二人一組のペアに割り振られ、学期を通じて毎週、課題を共同で取り組んだ。自然フィールド実験の結果によると、大学入試スコアに基づいて「能力が低い」と分類された学生が、「能力が高い」と分類された学生とペアを組んだ場合、介入が行われた科目のみならず、履修していた他の履修科目においても学業成績が大きく向上し、強い波及現象が計測された。直接効果に対する波及効果の相対的大きさは0.723であった。「能力の低い」学生とペアを組むことになった「能力の高い」学生は、そのペア分けによって、学業に悪影響を受けることはなかった。これらの結果は、能力差の大きいメンバーで構成されるグループにおけるピア・インタラクションがパレート効率的であることを示しており、能力に基づく波及効果を活用することで、教育現場や企業組織において生産性や学習効果を向上させる可能性があることを示唆している。