監査法人の業種特化と監査の質に関する実証分析
Empirical Analysis on Industry Specialization of Audit Firms and Its Audit Quality

加藤諒、仙場胡丹

2016年6月20日

JELコード : M42, M41

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【要旨】

本稿の目的は、監査法人の業種特化(industry specialization)と監査の質との関連性について、統計的手法を用いて実証的に分析することである。近年監査法人がある業種に特化することは、監査法人側からも、そしてそのクライアント側からも要請されていると考えられ、このことと監査の質との関連性は学術的にも実務的にも大きな関心事である。また特に日本市場においては、中央青山(みすず)監査法人が解体し、大監査法人が4つから3つに減った後は、監査サービス市場の競争が激化し、さらに監査法人の業種特化が要請されるようになっていることが示唆されている。そこで本稿では、裁量的発生高を監査の質の代理変数として用い、6つの監査法人の業種特化の代理変数を使用することで、このテーマについて分析を行った。更に因果推論の枠組みを応用し、傾向スコア解析を用いて、より頑健な推定を行った。その結果、多くの先行研究と同じように、業種特化している監査法人の方がそうでない監査法人よりも監査の質が高いことが確認された。また、大監査法人が3つに減った2008年以降は、監査法人の業種特化による監査の質の優位性が大きくなることも確認された。