デンマークの福祉システムにおける普遍主義化過程
The Process of Universalism in the Danish Welfare System: The multi-tiered need’s testing system in Denmark

倉地真太郎

2016年3月28日

JELコード : I38, D63, H75

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【要旨】

本稿の目的は,デンマークで導入された包括的な支援サービス,生活支援法(Bistandsloven)の政策形成過程を分析し,ニーズ調査に基づくサービス水準決定と普遍主義の関係性について考察をすることである.北欧諸国の福祉システムは,普遍主義的理念に基いているが,それは歴史的な制度変化のなかで定着したものでもある.1976年に導入された生活支援法は,デンマーク社会政策の普遍主義化のプロセスにおける基盤として位置づけられる.それは既存の7つの福祉関連法を統合することで窓口を一本化し,ニーズ評価に基づいた給付・サービス水準の決定に改めるものであった.これにより地方政府のニーズ補足能力を改善し,地方レベルでのサービスの普遍主義化が進められた.ところが1980年代に入ると,サービスに対するソーシャルワーカーの過大な負担やサービス・負担水準の地域間格差が問題視されるようになり,一部給付水準の地方の裁量性が見直されることになった.このようしてデンマークの福祉システムは,中央と地方レベルで普遍主義やニーズ調査のあり方をめぐって緊張関係を内包しながら変化してきた.そして,この関係性の変化には,租税負担や租税収入の規模や状況の変化が背景にあったのである.