デンマークにおける課税自主権と協調的政府間関係-1980年代前半の「国と地方の協議の場」に着目して-
Local Income Taxation and Intergovernmental Relationships in Denmark -Budget cooperation in the 1980s-

倉地真太郎

2015年3月

JELコード : H71, H72, H77

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【要旨】

本稿の目的は,デンマークにおける地方所得税率の決定方式の確立に政府間協議制度の合意が与えた影響を分析し,政府間関係のあり方と課税自主権の関係性を明らかにすることである.デンマークの地方政府には地方所得税の課税自主権(税率操作権)が保証されているが,実際には中央政府と地方政府代表機関の政府間合意に基づいて平均税率増加率を決定してきた経緯がある.しかし財政再建期に中央政府の税率コントロール要求と地方政府の課税自主権が衝突することになった.この問題を解消する上で重要な役割を果たしたのが拡大総枠均衡原則( Det Udvidede Totalbalanceprincip)であった.この原則は財源措置なき事務の義務付け( Unfunded Mandates)の禁止を徹底すると同時に,中央政府の規制・法律に伴う地方政府財政への影響を補助金で保証する原則である.本稿では,この原則の成立過程を分析した.分析の結果,この原則を交渉過程で中央政府に認めさせるために寄与したのが,地方政府側が交渉の場で示した地方所得税の増税可能性であることが明らかになった.