親の所得と子どもの数の関係についての経済分析
An Economic Analysis of the Relationship between Household Income and Fertility

著者: 何芳
発行日: 2016年8月19日
No: DP2016-020
JELコード: J13, D13, D31
言語: 日本語
【要旨/ハイライト】

夫の所得,妻の所得は,子どもの数に関する意思決定において,異なる影響を持つと考えられる。妻が育児を担うことが前提なら,夫の所得の増加は主にプラスの影響を与える所得効果が働き,妻の所得の増加は主にマイナスの影響を与える代替効果が働く。夫と妻の所得を合わせた世帯所得に関しては,夫の所得と妻の所得の変動による影響が混在しており,子どもの数に対してプラスとマイナスのどちらも考えられるため,どちらの効果が大きいかを確認するには,実証分析が必要である。本稿は,夫の所得,妻の所得,世帯所得の増加が子どもの数にどのような影響を与えるかについて,慶應義塾大学「日本家計パネル調査」(2004-2015)を利用して実証分析を行った。夫の所得と世帯所得に関しては,3年移動平均で定義した恒常所得の効果について,妻の所得に関しては,機会費用のことを念頭に置き,就業経験と個人属性に基づき推定した帰属賃金率の効果について考察した。さらに,夫の所得,妻の所得,世帯所得と子どもの数の同時決定の内生性をコントロールするために,操作変数法を用いた。観察できない世帯の異質性と時間を通じて変化する観察できなかった変数の影響をコントロールするために,パネル固定効果モデルを利用した。分析の結果,夫の恒常所得の増加は,子どもの数に対して有意にプラスの影響,妻の所得は子どもの数に対して有意にマイナスの影響を与えることが観察された。世帯の恒常所得の増加も子どもの数に対してプラスの影響が観察された。